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“今、この場所からお前は俺のものだ”
そう宣言されたのは、もう一週間も前のことになる。菊は穏やかに暮らしていただけなのに。それなのに。平穏な日々がこのままずっと続くのだとそう思っていた菊を襲ったのは“海賊”の略奪だった。菊の住んでいた村は平和だったから、急な襲撃に何も対処が出来なかった。奪われるままに奪われ、そうして何を思ったのかその船の船長が菊に目を止めたのだ。そうして菊は彼に“買われた”わけで。
「なぁ、いい加減に諦めてくれないか」
 疲れたような声に、菊は眉を顰める。
「俺、流石に何度もお前が自殺しようとするのを阻止するのはキツい」
「…疲れたのならばやめればいいんです。私だってこんないたちごっこ、さっさと終わりにしたい」
「―――――――俺はお前を買ったんだ。俺のものが、俺の前から勝手にいなくなるなって言っているんだよ」
「私は、モノじゃないのに」
「けれど、俺はお前を買ったんだ」
言い聞かせるように彼は菊の耳元でそう囁いた。
「何故」
「ほしいと思ったから」
目を覗きこまれ、囁かれた睦言にどくりと、心臓が跳ねた。馬鹿みたい、本当に、どうして。
「俺は、海賊だ。奪うことしか知らない」
嗚呼、と菊は顔を手で覆った。何故、どうして。どうして、私はこんな男に。
きらきらと太陽を模した髪に、海の深い所の色の瞳に、自由を感じて、憧れてしまったのだろう。“買われた”と諦めたくとも諦められない理由がある。だって、私の心は、もうすでに私のものではないのに。

彼を目にして奪われたのは、私の心。






彼はいつだって部屋の決まった場所に居た。多少HRの終わるのが遅い時など、例外はあったにしろ大体は彼は俺の来る前にはその席についていた。窓際の一番後ろの席。その席が誰のものか、というコト気がついたときは腸が煮えくりかえりそうになったけれど。
「キク」
「先輩に向かって、呼び捨てとはいい度胸ですね。フランシス」
「いいじゃん、幼馴染だし」
いつものように定位置に座っているお前に声をかければ、ほんの少しだけ不満そうな顔でキクは振り向いた。彼は教科書を閉じると俺を見てほんのすこし、眉をよせる。
「どうかしましたか」
「何が」
「浮かない顔をしているので」
「………いや、もうすぐ卒業だなって」
「貴方が卒業するわけではないでしょう」
くすくすと笑って「卒業するのは私ですから」と菊はそう言った。
「あーあ、なんであと一年前に生まれなかったかなぁ」
「私は、あと一年後に生まれたかったですねぇ」
それは、アイツと同じクラスになりたいってこと?きゅっと握りこぶしを作り、俺はその言葉を飲み込んだ。彼の座っている席の前の席を陣取り、俺は乱暴に座った。がたん!という椅子の悲鳴にキクはおどろいたような顔をする。
「菊の進路は?」
「あぁ、先日推薦で経済学部に進学が決まったんです」
「マジで?」
驚いた俺に菊は有名大学の名前を口にすると微笑んだ。浪人すれば、俺と同じ学年になったのにと酷いことを俺は考えた。俺ってば最低。
「これで、貴方に思う存分勉強を教えることが出来そうです」
「げ、いらねぇよ!」
「おや、私と同じ大学に入りたいんでしょう?」
「………誰に聞いたんだよ」
「貴方のママンから。ふふ、随分私も好かれているものですね」
揶揄するような菊の口調に「…うわ、マジで最低」と顔を引き攣らせる。その言葉に菊は声を出して笑う。その顔を見ながら、俺はしみじみと思った。「あと、一年後に生まれたかったな…」と。そうすれば、彼の隣で彼と同じ景色を見ることが出来たのに、と。
「残念ですが、そのままの貴方の成績では私と同じ大学には入れませんよ」
「失礼なやつだな!」
「一年もあればなんとかなるって言っているんです。さ、教科書を開いてください」
「期末テスト終わったばっかりなんだけれど」
「そんなのは関係ありません。大事なのは日々の努力。貴方は目を離すとすぐにサボるんだから」
ぶつくさといいながら、菊はしゃーぺんをくるくるとまわした。

「一緒に、楽しいキャンパスライフをおくるんでしょう?」
その言葉に、しぶしぶ俺は教科書を取りだした。全く、これだから無意識な天然は。けれども、その半面嬉しくて仕方がないと言ったらどうするんだろう。だって、アイツはそんなことはできない。彼とのこの距離は俺ただひとりのもの。

「フランシス?」
放課後のヒミツに、俺はこっそりと微笑んだ。










彼はいつだって部屋の決まった場所に居た。多少HRの終わるのが遅い時など、例外はあったにしろ大体は彼は俺の来る前にはその席についていた。窓際の一番後ろの席。その席が誰のものか、というコト気がついたときは腸が煮えくりかえりそうになったけれど。
「キク」
「先輩に向かって、呼び捨てとはいい度胸ですね。フランシス」
「いいじゃん、幼馴染だし」
いつものように定位置に座っているお前に声をかければ、ほんの少しだけ不満そうな顔でキクは振り向いた。彼は教科書を閉じると俺を見てほんのすこし、眉をよせる。
「どうかしましたか」
「何が」
「浮かない顔をしているので」
「………いや、もうすぐ卒業だなって」
「貴方が卒業するわけではないでしょう」
くすくすと笑って「卒業するのは私ですから」と菊はそう言った。
「あーあ、なんであと一年前に生まれなかったかなぁ」
「私は、あと一年後に生まれたかったですねぇ」
それは、アイツと同じクラスになりたいってこと?きゅっと握りこぶしを作り、俺はその言葉を飲み込んだ。彼の座っている席の前の席を陣取り、俺は乱暴に座った。がたん!という椅子の悲鳴にキクはおどろいたような顔をする。
「菊の進路は?」
「あぁ、先日推薦で経済学部に進学が決まったんです」
「マジで?」
驚いた俺に菊は有名大学の名前を口にすると微笑んだ。浪人すれば、俺と同じ学年になったのにと酷いことを俺は考えた。俺ってば最低。
「これで、貴方に思う存分勉強を教えることが出来そうです」
「げ、いらねぇよ!」
「おや、私と同じ大学に入りたいんでしょう?」
「………誰に聞いたんだよ」
「貴方のママンから。ふふ、随分私も好かれているものですね」
揶揄するような菊の口調に「…うわ、マジで最低」と顔を引き攣らせる。その言葉に菊は声を出して笑う。その顔を見ながら、俺はしみじみと思った。「あと、一年後に生まれたかったな…」と。そうすれば、彼の隣で彼と同じ景色を見ることが出来たのに、と。
「残念ですが、そのままの貴方の成績では私と同じ大学には入れませんよ」
「失礼なやつだな!」
「一年もあればなんとかなるって言っているんです。さ、教科書を開いてください」
「期末テスト終わったばっかりなんだけれど」
「そんなのは関係ありません。大事なのは日々の努力。貴方は目を離すとすぐにサボるんだから」
ぶつくさといいながら、菊はしゃーぺんをくるくるとまわした。

「一緒に、楽しいキャンパスライフをおくるんでしょう?」
その言葉に、しぶしぶ俺は教科書を取りだした。全く、これだから無意識な天然は。けれども、その半面嬉しくて仕方がないと言ったらどうするんだろう。だって、アイツはそんなことはできない。彼とのこの距離は俺ただひとりのもの。

「フランシス?」
放課後のヒミツに、俺はこっそりと微笑んだ。










貴方のその指で、私の首を絞めてくれないかしらとすら思うのです。

私が貴方様とお付き合いさせてから何百年の月日が経ったでしょう?想いは通じ合っているはずなのに、何故かこの想いは日に日に大きくなっていくばかり。それは、とてもよいことなのだと友人には言われますが、私は決してよろしくないと思うのです。こんなこと、人に言えたことはないのですが、いつかこの想いが貴方様を飲みこんでしまうかもしれないと私は恐ろしくて恐ろしくてたまらないのです。ねぇ、イギリスさん。私は良い恋人なのでしょうか。貴方を思うだけで胸が張り裂けんばかりに痛くなって、けれども同時に私は貴方を傷つけたくて仕方がなくなるときがあるのです。貴方は、いつだって綺麗で美しいから。
その月の光が溶けたようなその御髪、磨かれたエメラルドのようなその御目、その白磁のような白い肌、それらを思うたびに私は貴方を傷つけたくて仕方がなくなるのです。ねぇ、私はもしかしたらくるっているのでしょうか?貴方のその深い森の色をした瞳が誰か他の方を映しているのを見るだけでこの体は熱くなって、心の中に居る鬼が貴方を殺して仕舞えと唆すのです。そうすれば、貴方は全部私のものになるでしょう?
私は貴方とは違って、ただただ平凡なばかりの人間…いいえ、人間ですらない。本当は貴方の目にもとまるほどの価値のない人間だというのを知っているのに私は貴方の傍に居たいとずっと思っているのです。あぁ、貴方が見る私がもっと美しければよかった。貴方と隣で素直に笑えるほどに素晴らしい人間だったのならばどんなによかったのか!
貴方のためならば、きっと私はいくつもの罪を重ねるのでしょう。貴方の傍にいるためならば、どんなに苦しくても、悲しくても。きっと、私は。
「どうかしたか、日本」
 ――――――――――――あぁ、お優しい方。何も知らぬ愚かで愛しい私の恋人。

私は私を心配する声に私はなんでもないというように微笑んで、そうして私の頬を撫でる彼の手をとった。イギリスさん、と彼だけに聞こえるように小さな声で囁いて私は目を瞑る。
「日本?」
不思議そうな声を聞きながら、私は彼の手に己の頬を押しつけて息を吐いた。そうして、そっと己の首へと誘導して、目を開く。彼は、戸惑ったような顔をして私を見つめていた。その、私が何よりも焦がれる翡翠色の瞳を揺らして。
「口づけを、くださいませんか」
出来れば、そのまま殺してほしいという言葉は飲みこんだ。だって、そんなことを言ったら貴方を困らせてしまうでしょう?
この病みきった想いだって、貴方を傷つけるのならば私は隠し続ける。幸い、私は隠すのは何よりも得手ですからね。美しい貴方を悲しませるような、そんなへまをこの私がやるものですか。

私の願いどおりに降りてくる唇に私は彼の首裏に腕をまわした。






10.理想的な君と不完全な僕 (後)まるで夜の闇を溶かしたかのような髪に、亜細亜にしては色素の薄い肌、興味があることになるときらきらと輝く瞳に、まるで果実のように甘いその唇。俺の恋人は、完璧といっても差し支えのないほどに可愛らしかった。可愛い、まるで食べてしまいたいと思うくらいに。けれど、けれど。
「イギリスさん」
全面に信頼を現されているのに、誰がその信頼に裏切れると思うだろうか。俺が何を考えているかもしらずに、俺の腕の中で幸せそうに微笑む日本。俺の恋人。
彼と付き合って何百年と経っているけれど、この恋情は衰えるばかりか増していくばかり。あぁ、いとしい、愛しい。食べて、しまいたい。ひとつになってしまいたい。けれど、国という身分からそんなことはできやしない。もし、もっと距離が近ければそれも出来たかもしれないけれど。
本来なら、俺は彼に触れることすら許されないのだろう。だって、俺はあまりにも汚れすぎているから。彼を抱きしめたら、きっと彼を汚してしまうから。それを知っているけれど、俺にはコイツを離すことができない。一度彼のぬくもりをしって、彼が離せなくなってしまったのだ。
美しく、綺麗な俺の恋人は俺の手がどんなに血で汚れているかを知らずに無邪気に俺の腕で微笑み続ける。騙しているという罪悪感はあるけれど、だからといって贖罪するつもりはない。あぁ、本当に俺はずるくて、汚い。お前は、俺には勿体無い。
「どうかしたか、日本」
俺の腕の中で、どこかぼんやりと外を眺めている日本に俺は怖くなる。もしかして、俺から逃れたいと思っているのではないかと恐ろしくなる。もしも、日本が離せと言ったらどうしよう?きっと、箍が外れてしまう。日本を閉じ込めて、そうして外に出せなくなってしまう。そう出来たら、幸せなのに。日本の頬を撫でながら、そう思っていれば俺の思惑とは別に、日本は綺麗に微笑んだ。そうして、俺の手をとり「イギリスさん」と甘い声で俺の名前を呼ぶ。呼ばれ慣れた、その名前はお前に呼ばれるだけできらきらとしたものになるから不思議なものだ。視線だけで、彼の呼びかけに答えれば日本は目を瞑った。
「日本?」
もしかしたら、このまま消えてしまうのかもしれない。
馬鹿なことだとわかっていたけれど、そんな想像をしてしまうほど日本の様子は儚くみえて俺はほんの少しだけ抱きしめる力を強くした。日本は俺の手に自分の頬を押しつけ、小さく息を吐いた後に日本の首へと俺の手を誘った。何を、俺に求めているのだろう。愚かな俺は、彼の意図がわからなくて、彼の漆黒の瞳をみつめることしかできない。
彼は小さく微笑むと「口づけをくださいませんか」と静かにそう言った。その願いの通り、俺はこの可愛い恋人へと口づけを贈る。

このまま、時間が止まってしまえばいいのにと思いながら。
完璧すぎるお前と、不完全な俺。





きっと俺はこれからもお前に焦がれ続けるのだろう。






好きな人が居ました。いえ、嘘をつきました。好きな人が居ます。今も、昔も。けれども、この想いはきっと貴方を傷つけてしまう。けれども、捨てなければいけないと思えば思うほどに想いは大きくなっていくばかりで。私は、どうすればいいのでしょう?どうしたら、良いのでしょう?

「よ、日本」
「こんにちは、フランスさん」
会議が終わり、閑散とした会議場の中で私はひっそりと想いを寄せている方から声をかけられた。それに弾む心と、ほんの少しの焦燥感。フランスさんはいつものように何を考えているかを読ませない微笑を浮かべて、私の顔をじっと眺める。その視線に、ほんの少し緊張しながら、けれどもけっして顔には出さないようにと私は気をつける。この人は決して己のテリトリー内に他人をいれないひとだ。もしも私がこの人に好意を持っていると気がつかれたら、やんわりと境界線を引かれてしまうのだろう。
「何か?」
だからこそ、私はこの想いを隠し続ける。それは私自身を守るためのものであり、同時に貴方を守るためにも。
「少し、気になることがあってね」
「気になること」
私が首を傾げると、フランスさんは自身の唇を舐めて口端を吊り上げた。
「……会議の最中に一度も俺の顔を見なかっただろう?いつもはじっと…嘗める様に俺の事を見つめているくせに、さ」
「っ!な、なめ…!違います!」
露骨な表現に、私は顔を赤くさせた。そんなことなどしていない!声を荒げて否定をすればフランスさんは酷く蠱惑的な笑いを浮かべた。
「そう?俺はいつもその視線にぞくぞくしているんだけど」
ついと顎を取られ、唇を寄せられる。吐息がかかるくらいに近くなった距離に、私は一瞬息を止めた後に慌てて彼の胸板を押した。
「やめてください」
「おや、残念」
残念、というわりにはあまり残念そうには聞こえないのはどうしてだろう。むっと眉を寄せて、睨みつければまるで子供をみるような、そんな視線とぶつかる。揶揄われている。拳を握りしめ、唇を噛めば「切れてしまうよ」とやんわりと注意された。
「そんなに可愛い顔なのに、勿体無い」
「御冗談を」
「俺は、日本が好きなのに」
「………私は、貴方の事が好きではありません」
「嘘だな」
断定するようなその口調に私は目を細めた。
「いいえ、嘘ではありません。好き、だなんてそんな生ぬるい感情なんかではこの想いは語りつくせない」
彼のネクタイを思い切り引っ張り、唇に噛みつく。じわりと広がった鉄の味に笑って、私はフランスさんへと微笑んでみせた。餞別には、これで十分だ。どこか、冷めた意識でそう思うと同時に、私は唇を開く。
「――――――――どうぞ、お逃げください。私の想いはきっと貴方を苦しめるのでしょう。貴方のその自由な翼をもぎ、鎖に繋いでしまいたいとすら私は思うのですから」
これで、終わり。呆気のない終わり方だったけれども、仕方がないだろう。掴んでいたネクタイから手を離して、私はフランスさんを見て、そうして瞠目する。
(これは、ダレだろう)
姿形、己の認識、視界だけを判断するのならばそれは紛れもない自分の知っているフランスさんであるというのに、何かが違う気がして私は眉を寄せる。
「フランスさん?」
「なぁ、日本。俺はほんの少しだけ、怒っているんだ」
「……何に、ですか」
いつもとは違う雰囲気に、ほんの少しだけ流されかけていることに気がついて、私は己の腕を掴み自分を叱咤する。
「たとえば、日本が俺の意見を聞かずに勝手に自分の想いを自己完結するところとか」
「わかりきったコトを聞いてどうしますか」
「お前のそれは俺のためというよりは自分の保身のためだな」
「年寄りは知識がある分だけ傷つくことを恐れるものですからね」
「ふぅん?」
フランスさんはそう呟くと私を抱きしめて、耳元へと唇を近付けた。
「俺だって、負けてはいないんだぞ?」
その言葉とともに、骨が折れるかと思うくらいの力を腕に込められて私は息を詰めるとともにようやく気がつく。
あぁ、成程。案外お似合いの二人というわけですか。惹かれるには、惹かれるだけの理由があったことを知り、私は彼の背に遠慮なく爪をたててみせた。


ねぇ、私は一度チャンスをあげたでしょう?お逃げなさいって。その言葉はね、裏を返せばこの機会を逃せばもう一生

――――――――――――逃がしませんよ、っていう意味なんですよ?







***
咲さん、ありがとうございました!
すれちがい…すれ違って、いる?まぁあえて気にしないのが俺クオリティ。嘘です、すいません。っていうかこう…なんだかちょっと怖い仏日になった気がしてなりません(遠い目)





「よう、日本!」
その声に、私はびくりと体を震わせた。こ、この声は…!逃げ出そうとした瞬間にがっしりと体を拘束され、私は顔を引き攣らせた。に、逃げ遅れた!わっしゃわっしゃと髪を思い切り掻き乱され「うぎゃぁ!」私は悲鳴をあげる。
「ぷ、プロイセンさん…な、何か御用でしょうか…」
警戒を露わにしてそう言えば、プロイセンさんはにっこりと笑って「なんだよ、用がなければ話しかけちゃいけねぇのか?ああん?」と宣う。その笑みはあまり性質のよろしくない類のもので、私は「いいいいいえ!そんなことはありませんが、出来れば離してくださるとうれしいのですが!」とジタバタと暴れた。早く逃げなければ何をされるかわかったものじゃない!
「まだ用がすんでねーぞ」
やっとの思いでプロイセンさんの拘束から脱出して、距離をとった所にそんな言葉を吐かれる。
「だから何の御用かって聞いているんじゃないですか!」
きっ、と睨みつけて(涙ながらの睨みだからあまり怖くはみえないだろうけれど)そう言えばプロイセンさんは物凄く良い笑顔で「お前のことを虐めにきたに決まってるだろ」と宣った。なんていう俺様。一瞬絶句したものの、「すいません、すぐに帰ります。さようなら」私はすぐに踵を返して速足でその場所を立ち去ろうとする。
がっしりと、肩を掴まれていなければ家に帰れただろう。
「誠に遺憾です!私にはMの趣味はありません!帰ります!離してください!」
「何言っているんだよ、信憑性がねぇよ、このドMめ。いいからさっさと付き合いやがれ」
「ドッ!?だ、誰がですか!誰が!」
「お前しか居ねぇだろ、いいから来いって言ってんだよ」
プロイセンさんは待つことに焦れたのか、私の首根っこを掴むと歩き出した。ずるずると引きずられながら、私は色々と諦めた。

「そういえば、貴方は昔から私の事嫌いですよね」
言って、自分で自分の言葉に傷ついた。もしかしたら、私は本当にドMなのかもしれない。
「………は?」
私を引きずっていたプロイセンさんが歩みを止めて、信じられないものを見るような眼で私を見た。
「私のこと見ればいつだって髪をくしゃくしゃにするし。初めて会った時にお前みたいなチビっ子が国だとかまじ有り得ねぇしとか言われたし」
「ばっ!それが何で嫌いになるんだよ!」
「だって、昔から意地悪するし」
「…してねぇよ」
「今だって、首根っこつかまれているし」
どさりといきなり離されて、地面に尻もちをついた。痛い。っていうか酷い。
「…………俺は」
ほんの少し、声を低くしてプロイセンさんは私を睨みつけた。心なしか顔が赤くて(何でだろう)その顔をぼんやりとみていれば、プロイセンさんは舌打ちをした。
「今だって、お前が行きたいってずっと前から言っていたレストランに連れていってやろうとしたのに…お前が、逃げるから」
レストラン?そんなこと、言ったっけ。過去を思い出して、そういえば前回あたりにドイツ料理の美味しいお店を知りたいのだと洩らしたのを思い出した。あれ、もしかしたら、悪いのは私なんですか。
嘘を吐く人ではないから(つけるほど器用ではないというのが正しい)もしかしたら「嫌い」と思われているわけではなかったのかもしれない。何故か、先程までの嫌な気持ちがなくなっているのに気がついて、私は心の中で首を傾げる。
「じゃぁ、プロイセンさんは私の事が好きですか?」
「ばっ…!いきなり何を言い出すんだよ!」
「え?」
顔を赤くしたプロイセンさんに、私は目を瞬かせる。きょとんとした顔をしていた私を見て、プロイセンさんは「あー、くそ」ぐしゃぐしゃと片手で自身の頭を掻き乱して、プロイセンさんは困った顔をした。そうして「もう、わかっただろ!?」と私に手を差し出した。
「ほら、何も言わずにこの俺様についてこいよ!幸せにしてやるから!」
その言葉に、私、日本は恋に落ちる音を聞きました。マーベラス。







06.信じてくれなくても構わない。好きだった、よ。(3)「―――――――――おい」
沈黙を破ったのは、イギリスさんだった。びくりと体を震わせてから「な、なんですか」と赤くなった頬を隠すように手の平で頬を包めば舌打ちが聞こえた。
「お前、フランスと付き合うって本当か?」
「…………別に、貴方には関係ないじゃないですか」
あ、また可愛くない発言。いやでも私は別に彼と付き合おうとか良く思われたいとは考えていないわけで。……嫌われたくは、ないのだけれど。
「関係、あるから言ってんだろ」
「え」
「俺が、お前の事好きだから関係あるって言ってんだよ。聞こえねぇのかよ」
何を言われたか、が一瞬理解できなかった。ぽかんと口を開けて、イギリスさんの顔をまじまじと見る。好き。イギリスさんが………私を?
「うそ」
私の唇から洩れた言葉にイギリスさんは眉間に皺を刻むと「嘘ついてどうするんだ」といった。
「信じてもらえなくてもいい。好きなもんは好きだ、悪いか」
イギリスさんの頬がほんの少し、赤くて私は立ち尽くした。嘘、嘘でしょう。
嬉しいはずなのに、恥ずかしくて、なんと私は言うべきなのだろう。どうしよう、どうすればいいの。

散々に迷って、迷って。そうして、私は思い切り走りだした。逃げたい、恥ずかしさでこんなに逃げ出したくなるだなんて!だって、まず初めに信じられないし!
イギリスさんは初め、逃げ出した私に茫然としたようだったけれど、すぐに追いかけてきた。というか、もとより私は着物を着ていて、尚且つ…その、言うのは釈然としないけれども…リーチの差があるのだ。すぐに追いつかれて、抱きしめられた。自分とは違う体温に、私は体を震わせる。
「逃げんな、馬鹿」
「追われたら逃げますよ!」
「追ってもお前は逃げるだろうが」
呆れたように告げられ、私はむっとする。
「逃げませんから、離してください」
「……信じられねぇ」
思い切り力を込め、抱きしめられて私は一瞬息苦しさを覚えた。
「フランスじゃなくて、俺にしておけ。幸せにしてやる」
ほんの少し、その台詞にときめいた私に罪はないだろう。けれど、そこで素直に「はい」という事は出来ないのが私なのだ。現に、私の唇は私の心とは裏腹のことばかり口走る。
「……だって、いつも自分勝手なことばかりいうし」
「それは…大和撫子というもの、テイシュカンパクが好きなんだろ?」
私は目を白黒させた。もしかして、今までのって全部…そういうコト?なのだろうか。
「なんと言いますか…」
ずれている。でも、嫌われていなかったことが嬉しくて、私は微笑んだ。イギリスさんには、見えないようにこっそりと。
「お前が好きなんだ、悪いか、馬鹿」

返事は、彼の背中を抱きしめ返すことで応えた。







***
リクエスト:Romanで英日(♀)でした。Romanの二人というとどうにも極悪*ツンデレなイメージがありましたのですが…これ、ちゃんと大丈夫でしょうか(オロオロ
なんだか、結構楽しくてwktk(*´∀`*)してたよ
まさかの三話という長さにほんの少しどぎまぎしました(笑)
由さん、リクエストありがとうございました!






「いい加減、お前は俺のものになるべきだろ?」
傲慢な台詞に、私は怒りで体を震わせた。この、男は…!どうしてこんな言い方しかできないのだろう!
「誰が、なるもんですか!」
私の言葉に、その男――イギリスさん―――は面白そうに笑うだけだった。
揶揄われているのだ。屈辱に身を震わせ、私はその人の目の前から駈け出したのだった。


「なんです!あの男!本当に無礼なやつですね!」
ぽこぽこと怒りながら歩いていれば「まぁまぁ、悪く思わないでやってよ」とフランスさんの声がどこからか聞こえてきた。それにしても、欧州の方は不思議だ。声は聞こえたのに姿は見えなくて、私は目を瞬かせた。きょろきょろとあたりをみわたしていると笑い声が聞こえた。
「上だよ、上」
声に言われるがまま、上を向いて私は瞠目する。彼は、地上から数メートル上の所で、木の幹に背を凭れかけていた。
「な、何をやっていらっしゃるのです…!」
顔を青ざめさせて危ないと喚いた私にフランスさんはくすくすと柔らかく笑い、そうして空へと身を躍らせた。
「フランスさん!」
私の叫び声にも関わらず、地面へ降り立ち彼は平然とした様子で微笑んだ。
「ボンジュール、マドモアゼル?」
手を取り、爪先に唇を落とされれば体から力が抜けた。良かった、無事で。
「日本は優しいねぇ」
によによと笑い、フランスさんは首を傾げた。
「それで?またイギリスは何かやったの?」
フランスさんの言葉に、私は先程の怒りを思い出して「聞いてください!」とがしりと彼のスーツの胸元を掴んだ。
「あの人、また良くわからないコト言って私の事を植民地にしようとしているんです!」
「……………植民地?」
「なんだか知りませんがお前は俺のものになるべきだとか、お前と俺とが出会ったのが運命だとか…あぁ、もう!私が女だからって馬鹿にして!いつか思い切り殴ってやるんですから!」
「…………………。あー、うん、えーと」
「なんです」
何故か、急にフランスさんは困ったような顔になった。
「日本ってさ、天然?」
「…天然?湧水なら湧いてますが。山あるし」
 私の言葉にフランスさんはさらに困った顔をした。どうやら見当違いのことを言ってしまったようだ。首を傾げて、返答を待っているとフランスさんは「日本は、イギリスの事が嫌い?」と首を傾げた。その問いに私はほんの少し戸惑う。横暴で、粗野で、でも顔も見たくないほど嫌いというわけではなくて。彼と話しているといつだって面白い情報をくれたし、会話だって皮肉が所々きいていて面白い。
「嫌い、では…ないですけれど」
「じゃぁ、好きなの?」
何故、嫌いではないということが好きになるんだろう。

文句を言う為に開かれた唇は「顔が赤いぞ、日本」というフランスの言葉によって再び閉じられたわけで。信じてもらえないかもしれませんが、私はあの人が好き…なようです。



***
べ、別に好きなわけじゃ…!と言ってフランスにによによされるのもアリだと思います。
あと二話続きます



『翡翠の海賊』と呼ばれる海賊船に菊が乗っていた船が襲われたのは三カ月前の話だ。
何を思ったのか、その海賊のトップが菊に目を止め「こいつを連れていく」と宣言したのだ。家は商いを生業としていたけれども、菊の家は歴代からの武士の家系。知らぬ者の手に掛かるのならばいっそと海に身を投げ出そうとしたものの、失敗。それどころか「今度死のうとすんなら、もっと酷くしてやる」という言葉とともに体を開かれたのだ。菊は、女でもないのに。その時は、混乱して、そうして屈辱に体を震わせるしかなかった。


―――――――あぁ、なんと無様なことだろう。

己の不甲斐なさに嘆き、何度となく死のうとしているのにそれら全てを邪魔される。それどころか酷い快楽(快楽も過ぎれば苦痛になるのだと初めて知った)を持って、菊を苛み続け、窓がひとつ、ベッドがある簡易な部屋に閉じ込めた。まるで籠の鳥状態。
それだけなら、まだいい。何を思ったのか、あの男はわざわざ毎晩菊を抱きに来るのだ。

(でも、これで終わり)
男しかいない船上、己の容姿がどこか中性的だということは自覚していたために仕方ないと諦めかけていたけれど港に入ってしまえば彼の事だ。すぐに飽きるだろう。
用済みの菊は殺されるか、それとも売られるか、それとも。……どちらにしろ、いい結末ではない。隙を見て逃げるしかない、そう思っていたのだけれども。開くはずのないドアは、菊の予想に反して開いた。そして、そこに居るのは

「…………何で、貴方がここに居るんです」
「なんでお前に指図されなきゃいけねえんだよ」
翡翠色の瞳が強い光を持って菊を貫く。
「指図、というわけではありませんが……船は港についたようですから」
「なんで港に着くと俺がココにいちゃいけねぇんだよ」
「なんでって」
 わざわざ男を抱きに来なくてもいいじゃないかと思う。それとも、ついに殺される時が来たのか。腰にぶらさがっている銃を見て、菊は微笑んだ。
「嗚呼、成程。では私を殺しに来ましたか?」
「ハァ?なんで殺さなきゃいけねぇんだよ。意味わかんねぇ」
それを問いたいのは私の方だというのに。
「それなら、何をしに来たんですか」
「お前を抱きに。それ以外、何が?」
 平然と言うことでもないだろう、一瞬何を言われたのかわからなくて菊は目を瞬いた。
「…………私でなくとも、港には女性の方がいらっしゃるでしょう」
 溜息とともに菊が呟けば、海賊は舌打ちした。

「いいから。余計なことは考えず、お前は黙って喘いでいればいい」
唇に噛みつかれて、そうして菊は言われるがままに目を瞑った。
違いない、どちらにしろ考えても考えなくても結果は同じだというのならば考えないほうがいいのかもしれない。

彼がこの部屋に、菊の元に来て、菊が安心したのは何故、だなんてそんなこと考えない方が、いい。

一日目は、憎悪の対象。

二日目は、憐憫

七日目は、ほんのすこしの憧れ


様々な感情が入り混じりあい、もう何が何だかわからなくなる。
見捨てて、でも、見捨てないで。
相反する気持ちは、でもたったひとつの真実に基づくわけで。




認めてはいけない、貴方に惹かれていることなんて。






***
海賊は萌え!ですね^^
涼風さん、リクエストありがとうございました!





俺の恋人は酷く照れ屋です。
今風の言葉で言えば、ツンデレ。しかも黄金比である9:1の割合。ついでに1は俺の脳内デレだ!そんなツンデレな俺の嫁は、俺が愛を囁かない限りきっと素直に俺にデレられない。
っていうことで、俺は世界の中心で愛を叫ぶ勢いで日本へと叫んだ。
「愛してあげるからこっちにおいで!」
Come here!と両手を広げたら、酷く冷たい目で見られた。
「地球が滅びても行きません」
 つんと顔をそむけて、日本はそう言った。ぐすん、酷いよ、日本!俺の繊細なハートが壊れちゃうよ!苔を生やしながら、部屋の隅っこで畳に“の”の字を書き続けているのに日本は知らぬふりをして猫と戯れている。どうやら正面のナナメ隣の宇都口さんから猫を預かったようだ。ごろごろと喉を鳴らして、日本の膝の上を陣取っている。
「いい子ですね。ふふ、にぼしあげますよ、にぼし」
「………構ってくれないとお兄さん拗ねちゃうよ」
「どうぞ、存分に」
 にこりと可愛らしく微笑んで、日本はそう言った。ひどい。拗ねちゃうんだから!不貞寝してやるんだから!居間にあった赤色の座布団をふたつ折りにして、頭の下に引いた。
本当は寝るつもりなんてなかったんだけれど、なんとなくその場所に日がぽかぽかとあたって、気持ちが良くて。目を瞑っていたら、いつの間にか夢の世界に引きずり込まれてた。


目が覚めたら、日が傾いていた。目を瞑った段階では太陽は真上になったのに、なんてことだ!部屋が夕日色になっていて、いつの間に掛けられていたのかブランケットが俺の上にあった。きっと日本が掛けてくれたんだろう、何だかんだで優しいから。
恋人の優しさを噛みしめて、一人によによしていると「変な顔」と日本の声が降ってきた。
「これ、日本だろ?」
「ブランケットに足が生えるという事実がないのならば私でしょうね」
「―――――――ありがと、な」
「風邪をひいたら、私が困りますから」
素直じゃねーの。
でもこんなこと言ったら、日本はきっと怒るから俺は何も言わなかった。ただ「そっか」と一言言って、静かに笑うだけ。
「猫は?」
「もう、帰りましたよ」
「でも日本、酷いよ。折角、なかなか会えない恋人が来ているのに構ってくれないだなんて」
「………だって、恥ずかしいじゃないですか」
「え?」
「猫といえども、人目が…猫目?があるのに…いちゃつけるわけ!ないでしょう!」
 頬をほんのりと赤くして、日本は叫んだ。っていうか猫目ってなんだよ、おい!無茶苦茶可愛いじゃねぇか!思わずきゅんとときめいて、俺はによによとする。なんというか、人とずれているけれどまたそこがイイ。
「じゃ、誰の目もない今なら日本は俺に優しくしてくれるってわけだよな?」
 なにしてくれる?にやりと笑って、日本を眺めれば「っ!」と羞恥から顔を赤く染め上げた。おろおろと視線を彷徨わせて、そうして苦渋の選択をするように苦く呟く。

「……愛してあげるから、こっちにおいで」
 その言葉に俺は にゃぁと言って応えてみせた。



***
リクエストは「仏日」甘めでした。
この後は猫プレイに突入するわけですよね、わかります。まぁ、兄ちゃんは猫耳をつけるのが好きだからいいんじゃないでしょうか
夕凪さんありがとうございました!




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